【具体例付き】 社内コミュニケーションの課題調査に使えるアンケート項目

社内コミュニケーションは、業務効率や従業員のモチベーションに直結する重要な要素ですが、リモートワークの普及や働き方改革により、従来の対面コミュニケーションが困難になった現在、多くの企業が社内コミュニケーションの質的向上を求めています。
そこで重要な取り組みの1つが、社内コミュニケーション の実態を把握するアンケート調査の実施です。この記事では、社内コミュニケーション課題に関するアンケート調査の設計方法について、具体例付きで解説します。
【具体例付き】職場改善につなげる社内コミュニケーションに関したアンケート項目
効果的な社内コミュニケーションに関するアンケート項目を設計するためには、従業員の属性や業務内容、人間関係、使用ツールなど、多角的な視点から課題を捉える必要があります。
ここでは、実際の職場改善につながる具体的なアンケート項目例を、7つのカテゴリーに分けて詳しく解説します。
項目①基本情報
まずは、回答者の基本情報を収集しましょう。役職や部署、勤務形態によって、コミュニケーションに対する視点や課題が変わってくるからです。
例えば、以下の項目が挙げられます。
項目 | 選択肢 |
---|---|
性別 | 男性/女性/その他/回答しない |
年齢 | 20代/30代/40代/50代以上 |
役職 | 一般職員/主任・係長クラス/課長クラス/部長クラス以上/経営陣 |
勤続年数 | 1年未満/1〜3年/4〜10年/11年以上 |
勤続形態 | 完全出社/ハイブリッド勤務/完全リモート/その他 |
項目②仕事内容
仕事内容に関する質問は、業務の性質によってコミュニケーションの頻度や方法が変わるため、業務パフォーマンスとコミュニケーションの相関関係を把握する上で不可欠です。例えば、以下の項目が挙げられます。
項目 | 選択肢 |
---|---|
担当業務 | 営業・接客/企画・マーケティング/開発・技術/管理・事務/人事・総務/その他 |
目標設定の適切度 | 非常に適切/やや適切/どちらでもない/やや不適切/非常に不適切 |
月間残業時間 | 20時間未満/20〜40時間/40〜60時間/60時間以上 |
業務量 | 非常に適切/やや多い/適切/やや少ない/非常に少ない |
上司からの指示の明確さ | 常に明確/やや明確/どちらでもない/やや不明確/非常に不明確 |
仕事の進捗共有頻度 | 毎日/週2〜3回/週1回/月1〜2回/ほとんどない |
項目③対人関係・人間関係
対人関係や人間関係は、社内コミュニケーションの最も重要な要素です。上司、部下、同僚という3つの関係軸それぞれについて、コミュニケーションの頻度、質、満足度を測定することが重要でしょう。
例えば、以下の項目が挙げられます。
項目 | 選択肢 |
---|---|
上司との1on1ミーティング頻度 | 週1回以上/月1〜2回/数ヶ月に1回/ほとんどない/実施していない |
上司からのフィードバック満足度 | 非常に満足/やや満足/どちらでもない/やや不満/非常に不満 |
上司への相談のしやすさ | 非常にしやすい/ややしやすい/どちらでもない/ややしにくい/非常にしにくい |
部下からの相談頻度(管理職対象) | 週1回以上/月1〜2回/数ヶ月に1回/ほとんどない |
同僚との情報共有のしやすさ | 非常に円滑/やや円滑/どちらでもない/やや困難/非常に困難 |
職場の雰囲気 | 非常に良好/やや良好/どちらでもない/やや悪い/非常に悪い |
改善したい人間関係 | 上司との関係/部下との関係/同僚との関係/特になし |
項目④社内コミュニケーションツール
コミュニケーションツールの活用状況と満足度を把握することで、より効率的な情報伝達環境の構築が可能です。各ツールの特性を理解し、最適な使い分けを実現することが重要でしょう。
例えば、以下の項目が挙げられます。
項目 | 選択肢 |
---|---|
最も利用頻度の高いツール | メール/チャットツール/ビデオ会議/社内SNS/電話/対面 |
チャットツールの使いやすさ | 非常に使いやすい/やや使いやすい/どちらでもない/やや使いにくい/非常に使いにくい |
チャットツールでの意思疎通 | 非常に正確/やや正確/どちらでもない/やや不正確/非常に不正確 |
ビデオ会議システムのレスポンス速度 | 非常に速い/やや速い/どちらでもない/やや遅い/非常に遅い |
改善が必要なツール(理由も) | メール/チャットツール/ビデオ会議/社内SNS/電話/対面/特になし |
新ツール導入への関心度 | 非常に関心がある/やや関心がある/どちらでもない/あまり関心がない/全く関心がない |
項目⑤会社の方針や企業理念
経営陣のメッセージが従業員にどの程度浸透しているかを測定することで、トップダウンコミュニケーションの効果性を評価できます。企業理念の浸透度は、従業員エンゲージメントと密接に関連する重要な指標となるでしょう。
例えば、以下の項目が挙げられます。
項目 | 選択肢 |
---|---|
企業理念の理解度 | 完全に理解している/ある程度理解している/聞いたことはある/よく知らない/全く知らない |
経営方針への共感度 | 非常に共感している/やや共感している/どちらでもない/あまり共感していない/全く共感していない |
経営情報の伝達頻度 | 十分に伝達されている/ある程度伝達されている/どちらでもない/あまり伝達されていない/全く伝達されていない |
会社の将来性への理解度 | よく理解している/ある程度理解している/どちらでもない/あまり理解していない/全く理解していない |
自分の業務と会社目標の関連性 | 明確に理解している/ある程度理解している/どちらでもない/あまり理解していない/全く理解していない |
経営陣への相談のしやすさ | 非常にしやすい/ややしやすい/どちらでもない/ややしにくい/非常にしにくい |
項目⑥社内の情報共有方法
必要な情報が適切なタイミングで適切な人に届く仕組みが構築されているかを検証します。情報共有の効率性は、組織全体の業務パフォーマンスに大きな影響を与える重要な要素でしょう。
例えば、以下の項目が挙げられます。
項目 | 選択肢 |
---|---|
必要な情報の入手しやすさ | 非常に入手しやすい/やや入手しやすい/どちらでもない/やや入手しにくい/非常に入手しにくい |
共有される情報の正確性 | 非常に正確/やや正確/どちらでもない/やや不正確/非常に不正確 |
情報のタイムリーさ | 非常にタイムリー/ややタイムリー/どちらでもない/やや遅れがち/非常に遅れがち |
情報過多による見落とし | よくある/時々ある/どちらでもない/あまりない/全くない |
部門間の情報格差 | 大きく感じる/やや感じる/どちらでもない/あまり感じない/全く感じない |
重要情報の見極めやすさ | 非常に見極めやすい/やや見極めやすい/どちらでもない/やや見極めにくい/非常に見極めにくい |
項目⑦自由記述欄(改善提案・意見)
定型的な選択肢では捉えきれない具体的な課題や創意工夫に富んだ改善提案を収集するための重要な項目です。従業員の率直な声を聞くことで、数値データだけでは見えない問題の本質を理解できるでしょう。
例えば、以下の項目が挙げられます。
項目(自由記述) |
---|
社内コミュニケーションで最も改善が必要だと感じる点は何ですか |
理想的なコミュニケーション環境について具体的にお聞かせください |
上司や同僚に伝えたいが言えずにいることがあれば教えてください |
組織全体のコミュニケーション向上のための具体的な提案があれば教えてください |
現在のコミュニケーション環境で特に評価できる点があれば教えてください |
その他、社内コミュニケーションに関するご意見・ご要望 |
【企画前に要チェック】社員から本音を引き出すアンケート項目の企画コツ4選
アンケート調査を解決策に活用するには、従業員の本音を引き出せる設計の工夫が必要です。
ここでは、実際の現場で検証された4つの重要なコツについて詳しく解説します。
コツ①曖昧な表現や難しい用語を使わない
まず1つ目は「曖昧な表現や難しい用語を使わない」です。アンケートの回答精度を上げるためには、すべての従業員が理解しやすい言葉で、かつ明確で具体的な表現にすることで。曖昧な表現や専門用語を使うことで解釈が難しくなり、質問の意図に対して回答が得られる可能性が下がるからです。
たとえば、「コミュニケーションは良好ですか」という質問では、回答者によって「良好」の基準が大きく異なります。代わりに「上司と1週間に何回程度直接会話をしますか」「同僚からの質問に24時間以内に回答できていますか」といった具体的で測定可能な質問に変更することで、より正確なデータを収集できます。
コツ②現在→未来の順に項目を並び替える
2つ目は「現在→未来の順に項目を並び替える」です。回答しやすい現在の状況から、考える必要がある点で回答しにくい未来の状況の流れで項目を配置することで、回答者の負担を軽減できるからです。
たとえば、「現在の業務でのコミュニケーション頻度」「今使用しているツールの満足度」「現在の人間関係の状況」といった項目を前半に配置し、その後、「理想的なコミュニケーション環境はどのようなものか」「今後改善したい点は何か」「将来的に導入したいツールはあるか」といった未来志向の質問に移行します。
この順序により、回答者は現状を踏まえた上で建設的な提案を行いやすくなり、より実現可能性の高い改善アイデアを収集できるでしょう。
コツ③オープンクエスチョンが3割、クローズドクエスチョンが7割
質問形式のバランスにおいても、回答者の負担と回答結果の情報収集のしやすさを両立させる上で重要です。目安として、クローズドクエスチョン(選択式)を7割、オープンクエスチョン(自由記述式)を3割の比率にしましょう。
クローズドクエスチョンは統計的分析が容易で、組織全体の傾向を数値化して把握できるという利点があります。「満足度を5段階で評価してください」「該当する項目を選択してください」といった形式により、大量のデータを効率的に処理し、客観的な現状把握が可能になります。
一方、オープンクエスチョンは定量データでは捉えきれない具体的な課題や創意工夫に富んだ改善提案を収集するために不可欠です。ただし、自由記述は回答者の負担が大きいため、全体の3割程度に抑制し、最も重要な項目に限定することが適切でしょう。
コツ④匿名回答を許可する
匿名で回答できることも、従業員の本音を引き出すための最も重要な条件の一つです。実名での回答では人事評価への影響を懸念し、批判的な意見や率直な課題指摘を避ける傾向が強くなるからです。
匿名回答を許可する際は、単に「匿名です」と伝えるだけでなく、「回答データは統計的に処理され、個人を特定できる形では公開されません」「回答内容は人事部以外の第三者機関が分析し、個別の回答者を特定することはありません」といった具体的な説明をして、安心してもらいながら回答してもらいましょう。
【活用に必ずつなげる】社内コミュニケーションに関するアンケート実施の流れ
活用できる社内コミュニケーション アンケートは、明確な目的設定から結果の具体的活用まで、一連のプロセスを体系的に管理しています。
ここでは、アンケート実施を組織改善の確実な成果につなげるための8つのステップについて、実践的な観点から詳しく解説いたします。
ステップ①実施目的と問題背景を言語化する
まずは、明確で具体的な目的設定から行いましょう。曖昧な目的のままでは、適切な質問項目を設計できず、収集したデータを有効に活用することが難しくなるからです。
たとえば、実施目的の言語化では、「社内コミュニケーションを改善したい」といった抽象的な表現ではなく、「部門間の情報共有不足により発生している業務遅延を20%削減する」「リモートワーク導入後に低下した従業員エンゲージメントを向上させる」といった定量的で測定可能な目標を設定することが重要でしょう。
ステップ②考えられる課題点を先に仮説立てする
次に、アンケート調査を実施する前に、考えられる課題点を仮説することです。経験や観察に基づいた仮説を事前に整理することで、検証すべきポイントが明確になり、調査結果を活用しやすくなるからです。
実際に、仮説立ての際は、管理職、人事担当者、現場リーダーなど異なる立場の関係者から意見を収集することも重要です。「若手社員のコミュニケーション頻度が低下している」「リモートワークによりチームワークが悪化している」「上司からの情報伝達が不十分である」といった複数の視点から問題を捉えることで、仮説の視野を広げることができます。
ステップ③アンケート結果の活用用途を決める
次に、収集したデータをどのように活用するかを事前に決めましょう。活用用途が不明確なまま実施されたアンケートは、貴重なデータを収集しても「で、結局どうすればいいの?」と具体的なアクションへつなげらない可能性があるからです。
アンケート結果の活用用途は、具体的で実行可能な形で設定することが重要です。「管理職研修のカリキュラム改訂に活用」「社内コミュニケーションツールの導入判断材料として使用」「部門別の改善計画策定の基礎データとして利用」といった明確な用途を設定することで、収集すべきデータの種類や分析方法が決まります。
ステップ④アンケート項目を作成する
前述のステップで整理した目的、仮説、活用用途に基づいて、次は具体的なアンケート項目を作成していきましょう。各質問が特定の仮説検証や目的達成にどのように活用できるかイメージしながら考えるといいでしょう。
項目作成では、先ほど解説した基本項目を基盤としつつ、組織特有の課題に対応した追加項目を設計します。例えば、多拠点展開している企業では拠点間コミュニケーションに関する項目を、プロジェクトベースで働く組織では横断的協業に関する項目を重点的に設計することが適切でしょう。
前述のコツ(明確な表現、適切な順序、質問形式のバランス、匿名性の確保)を活用し、回答者にとって理解しやすく答えやすい形式にすることが重要です。
ステップ⑤アンケートの成功基準を決定する
次に、アンケート調査前に立てた仮説が正しかったかどうかを客観的に判断する成功基準を事前に設定しましょう。
例えば、「リモートワークによりチームワークが悪化している」という仮説では、「完全リモート勤務者の同僚との情報共有満足度が出社勤務者より20ポイント以上低ければ仮説が正しい」という基準を定めることが重要です。
ステップ⑥アンケート調査を実施し集計する
そして、実施したアンケート調査を実施して集計していきます。回答率の向上と回答品質の確保の工夫をするために、回答者の負担を考慮し、通常業務に支障をきたさない適切な長さに設定しましょう。
実施告知では、アンケートの目的や結果活用方法、匿名性の確保について丁寧に説明し、従業員の協力意欲を高めることが重要です。「皆様の率直な意見を組織改善に活用させていただきます」「回答内容が個人の評価に影響することは一切ありません」と一言添えてあげると、協力的に回答してくれる確率上がります。
ステップ⑦仮説が正しかったか検証する
そして、収集したデータを用いて、事前に立てた仮説が正しかったの答え合わせをします。具体的には、答え合わせを通して当初立てた成功基準に満たしたかを判断します。
例えば、ステップ⑤で設定した「完全リモート勤務者の同僚との情報共有満足度が出社勤務者より20ポイント以上低ければ仮説が正しい」という基準では、実測値が22ポイント差であれば仮説が証明されたことになります。仮説が正しかった場合は、その原因をより詳細に分析、仮説が外れた場合は、データから新たな課題や傾向を発見し、当初想定していなかった問題点を特定するといいでしょう。
ステップ⑧アンケート結果を次の施策に活用する
そして最後に、仮説検証の結果に基づいて、具体的で実行可能な改善施策を策定します。検証結果が明確であるほど、効果的な改善計画を立案し、組織のコミュニケーション品質の向上が期待できます。
たとえば、「完全リモート勤務者の情報共有満足度が低い」ことが確認された場合は、リモートワーカー向けの専用コミュニケーションツール導入や定期的なオンライン交流会開催を中期施策として計画するなど、具体的なアクションプランに落とし込んでいきます。ここまできて初めて「アンケート調査を活用した」といえます。
以上が、アンケート調査の設計方法でした。
【事例紹介】社内コミュニケーションを活性化した施策
アンケート調査結果を活用していく際に、どんな社内コミュニケーション施策で改善していけばいいか悩むかもしれません。その際は、一般的な理論だけでなく実際の成功事例を参考にするといいでしょう。
社内コミュニケーション活性化事例については、「社内コミュニケーションの活性化事例10選!おすすめツールとともに一挙紹介」や「【事例9選】社内コミュニケーションを活性化させるイベントの紹介」に紹介しています。ぜひ参考にしてください。
【2025年4月最新】上司と部下とのコミュニケーションに関する調査
また、SHIBUYA109 Labの2025年調査データによると、上司と部下間のコミュニケーションに関する課題は世代間での認識差が顕著に現れています。管理職世代は対面でのコミュニケーションを重視する傾向が強い一方、若手社員はデジタルツールを活用した効率的な情報共有を好む傾向があることが明らかになっています。
効果的な上司と部下間のコミュニケーションを実現するためには、両者の特性や好みを理解し、最適なコミュニケーション手法を組織として整備することが重要でしょう。ぜひ、調査データも参考にしてみてください。
"次に活用できる"アンケートを実施しましょう
以上が、社内コミュニケーションのアンケート調査の設計方法でした。アンケート調査を改善施策に活用するには、1回の調査だけで終わらせず、継続的に行いながら仮説を検証していくことが重要です。
本記事で解説したアンケート調査設計の8つのステップやコツなどを参考に、自社の実態に合ったアンケート調査を実施してみてください。少しでもお役に立てれば幸いです。