【事例9選】ユニークな社内コミュニケーション施策で組織を活性化
従業員同士の接点が希薄化し、組織の一体感が失われつつある企業も少なくありません。そうした中で注目されているのが、従来の枠組みにとらわれない「ユニークな社内コミュニケーション施策」です。
ずる休み制度や社長サンドバッグといった一見奇抜に見える取り組みが、実は従業員の心理的安全性を高め、組織活性化に大きく貢献している事例が増えています。
そこで本記事では、中小企業を中心に実践されているユニークな社内コミュニケーション事例を紹介しながら、導入時の注意点や成功のポイントについて詳しく解説していきます。
中小企業が取り組むユニークな社内コミュニケーション事例9選
社内コミュニケーションの活性化は、組織の生産性向上や従業員満足度の改善に直結する重要な経営課題です。そこで近年、中小企業を中心に独自性の高いユニークな取り組みが注目を集めています。
ここでは、実際に成果を上げているユニークな社内コミュニケーション活性化の事例を9つ紹介します。それぞれの取り組み内容だけでなく、導入背景や得られた効果についても解説します。
事例①ずる休み制度|パスクリエイト株式会社
パスクリエイト株式会社が導入した「ずる休み制度」は、3か月に1回まで社員が「ずる休みさせてください」と正直に申告すれば、当日の朝の申告でも有給休暇として休める仕組みです。どんなに真面目な人でも時には心身が重い日があるものだという前提に立ち、社員のメンタルヘルスを最優先に考えた施策といわれております。特に責任感の強い社員ほど、体調不良や精神的疲労を抱えながらも出社してしまう傾向が見られるのではないでしょうか。
このずる休み制度は「休むこと=悪」という風潮を払拭し、経営陣が率先して休息の必要性を認めることで社員の安心感を高めるために導入されたようです。その結果、実際に制度を利用した社員からは「おかげでリフレッシュできて翌日から頑張れた」という声が多く聞かれます。また会社への安心感が増し、この会社でずっと働きたいという帰属意識の向上に寄与していると考えられそうです。
※参考情報:UWORK「お疲れのあなたに堂々とずる休み」
事例②社長のおごり自販機|サントリー食品インターナショナル株式会社
2人の社員が社員証を同時にタッチすることで飲み物が無料になる「社長のおごり自販機」は、部門や職位の異なる社員同士が気軽にコミュニケーションができる仕組みをつくっています。単なる福利厚生ではなく、社内の異なる人同士がペアで使うことを促すことで、初対面の社員や普段接点のない人とも自然に会話が生まれやすくなる設計になっています。
雑談やちょっとした交流が生まれる場が作れるという点で、「誰かを誘う」という行動を促すことで、受動的ではなく能動的にコミュニケーションが生まれる点が特徴と言えるでしょう。実際に導入企業では、部署を超えた社員同士が「一緒に飲み物をもらおう」と誘い合う光景が日常的に見られるようになりました。特に新人社員や他部署の社員とも自然に会話するきっかけが増え、社内の風通しが良くなったとの声があります。
※参考情報:PR TIMES 「社員同士のつながりを重視する企業が増加 設置企業360社超え、雑談のきっかけをつくる「社長のおごり自販機」が“雑談”がちょっと生まれやすくなる条件を調査!」
事例③大失敗賞|太陽パーツ株式会社
太陽パーツ株式会社の「大失敗賞」は、年間の業績表彰において売上貢献などの優秀社員だけでなく、大きな失敗をした社員にも賞を贈るというユニークな制度です。該当者には副賞も授与され、失敗した社員を肯定的に捉え直し、チャレンジを奨励する文化を作ることが目的とされています通常は大きな損失を出した社員は肩身が狭くなりがちですが、敢えて表彰することで「失敗を乗り越えて成長の原動力にしてほしい」というメッセージを送っているわけです。
実際に同社が大失敗賞の精度を導入後、社員は失敗しても萎縮せずに済み、「次は頑張ろう」という前向きな雰囲気が生まれ、受賞者からは「悔しいが賞をもらったのを機に奮起できた」といった声も聞かれるようです。ほかにも「縁の下の力持ち賞」など遊び心のある賞を多数設けており、社員の様々な貢献を評価する文化が定着しています。
※参考情報:太陽パーツ株式会社「あなたの「失敗」「表彰」します!?」
事例④サイコロ給|株式会社カヤック
「面白法人」を標榜する株式会社カヤックの「サイコロ給」は、社員が毎月サイコロを振って給与の一部を決定する制度です。サイコロの出目に応じて基本給の一定割合がボーナスとして上乗せ支給される仕組みで、社員が上司など他人の評価を過度に気にせず、仕事を楽しめる風土を作ることを目的としています。「人はいちいち他人の評価を気にしていては楽しく働けない。社員には面白く働いてほしい。だから人の評価なんて気にするな」という想いが込められた施策です。
この施策により、社員の挑戦意欲が高まり、企業のユニークな文化が対外的にもPRポイントとなっています。採用活動においても「面白そうな会社」という印象を与え、同社の価値観に共感する人材の獲得に貢献していると考えられます。
※参考情報:面白法人カヤック「サイコロ給とスマイル給」
事例⑤おソトメン|グルメエックス株式会社
ラーメン通販サイト『宅麺.com』を運営するグルメエックス株式会社の「おソトメン」は、社員が自腹で食べたラーメン代を月3,000円まで会社負担する食事補助制度です。社員は食べたラーメンの写真を撮り、味の感想や店の情報を社内SNS等で共有することを条件としていますが、「おソトでラーメンを食べるメンバー」を略したユニークなネーミングで、楽しく業界研究とコミュニケーションを両立させている点が特徴です。
導入後、社員は積極的に美味しいラーメン店を開拓し、社内でレビューを共有し合うようになりました。社内コミュニケーションが活性化すると同時に、「次はあの店に行ってみよう」といった会話が弾み、ラーメン業界のトレンド情報も社内に蓄積されています。社員からは「趣味と仕事がつながって楽しい」「他部署の社員ともラーメン談義できた」など好評で、従業員満足度やエンゲージメント向上にもつながっていると考えられます。
※参考情報:グルメエックス株式会社「ラーメン月3杯無料!? 社員のラーメン代を支給する福利厚生『おソトメン』を導入」
事例⑥社長サンドバッグ制度|株式会社Eyes, JAPAN
株式会社Eyes, JAPANの「社長サンドバッグ制度」は、オフィスに社長の似顔絵入りサンドバッグを吊るし、社員は勤務時間中いつでも自由にパンチしてよいというユニークな制度です。通称「SSS(Shacho Sandbag System)」と呼ばれ、社員が仕事上の不満やストレスを感じた際に思い切り殴って発散できるようにしています。なお社内には複数のパンチングバッグが用意され、「社員のストレスは社長が受け止める」というメッセージが込められているようです。
導入後、社員は遠慮なくパンチを浴びせて笑い飛ばせるため、ちょっとした不満が溜まる前に解消されています。「上司を殴れる会社」として話題性も高く、メディアに取り上げられ会社のユニークな企業文化アピールにも成功しました。社員からは「ストレス発散が健全になった」「冗談を言い合える社風になった」といった声があり、コミュニケーションの活性化と離職防止にも寄与していると考えられます。
※参考情報:企業実務ONLINE「社長を殴ってストレス解消(?)する「社長サンドバッグシステム」」
事例⑦従業員プレゼン大会|VALX株式会社
フィットネスブランド運営のVALX株式会社では、社員参加型のプレゼンテーション大会「Leverage Adventure Cup」を企画し実施しています。社員が「この1年で挑戦したこと」をテーマにプレゼンを行い、全社員による投票で最も心に響いた発表を選出する社内イベントです。社員一人ひとりの挑戦や成長を共有し合うことで、互いの仕事への情熱や人となりを知る場となっています。
通常の業務報告会とは異なり、個人の挑戦にフォーカスすることで、従業員の人間的な側面や価値観を知る機会を創出している点が特徴です。プレゼン大会を通じて社内に熱量が伝播し、社員同士が会社への熱い想いを共有することで、チームワークが強化され、社員のモチベーションアップやエンゲージメント向上に寄与していると考えられます。
※参考情報:VALX株式会社「社員全員が審査員、1年間で挑戦したことを発表するプレゼンバトル「Leverage ADVENTURE CUP 2023」を実施」
事例⑧シャッフルランチ|トランスコスモス株式会社
トランスコスモス株式会社が開催するオンライン上での「シャッフルランチ」では、約100名の社員を20程度の仮想テーブルにランダムに振り分け、普段接点のない他部署メンバー同士がランチを共にしながら雑談できる場をつくっています。特に大規模組織では部署間の連携不足が業務効率の低下を招くため、こうしたランダムにメンバーを振り分けることで、自分では選ばない相手とも交流でき、新たな視点や気づきが得られる効果が期待できます。
シャッフルランチ後、社内のSlack上に設けた専用スレッドでは「参加できて良かった」「今度あの件について相談させてください」といった感謝や次回の約束のメッセージが交わされ、新たな横のつながりが生まれたと実感されたようです。こうして従業員間の協力関係が強化されることで、スムーズに情報共有や相互支援ができるようになるのではないでしょうか。
※参考情報:Ovice「部署を超えたつながり作りに成功。100人規模のシャッフルランチを開催」
事例⑨Slackのランダム1on1|海外中小企業
とある海外の中小企業では、Slackのボットを活用してランダムに社員同士をペアリングし、オンラインで1対1のカジュアルトークを促進する取り組みが広く行われています。具体的には、普段接点のない部署やチームのメンバー同士を半強制的にマッチングし、週に一度コーヒーブレイクがてら雑談する機会を設けるもので、オフィスでの偶発的な立ち話や休憩室での交流をオンライン上で再現しています。
ランダム1on1により部署の垣根を越えて人間関係が構築され、お互いのプライベートな一面が見えることで「同僚への親しみ」が生まれる効果もあると言われています。また異なる視点を持つ人同士の会話から思わぬアイデアやイノベーションが生まれることも多く、組織の創造性向上も期待できるでしょう。
※参考情報:Dai job HR Club「欧米のテレワークの現状_課題とその取り組み(2)」
ゲームイベントを使った社内コミュニケーション事例30選
ここまで紹介してきたユニークな事例に加えて、ゲームイベントの企画も、社内コミュニケーション活性化において有効な取り組みです。チーム対抗戦や謎解きゲーム、運動会形式のイベントなど、様々な形式のゲームを取り入れることで、普段の業務では見られない社員の一面を知ることができますし、ゲームには競争性や協力性が生まれる特性があるため、組織内の連帯感を高める効果も期待できるでしょう。
ゲームイベントの具体的な事例や実施方法、成功のポイントについては、「[事例から学ぶ]社内コミュニケーションの活性化事例10選」で詳しく紹介しています。自社に適したゲームイベントの企画にぜひ参考にしてください。
ユニークさだけの社内コミュニケーションを回避する4つの注意点
これまでご紹介してきたユニークな社内コミュニケーション事例ですが、一方で注意すべきこともあります。奇抜さや話題性だけを追求して導入すると、かえって従業員の不満を招いたり、本来の目的を見失ったりする危険性があるため、ここでは、ユニークな施策を導入する際に必ず押さえておくべき4つの注意点について解説していきます。
注意点①一部の人だけが楽しむ「内輪ノリ」にしないこと
ユニークな施策が一部の社員だけの内輪ウケになってしまうと、参加しづらい人が生まれるリスクがあります。例えば社内のノリについていけない新入社員やシャイな社員は、居心地の悪さから疎外感を感じることも少なくありません。
一部の人にとっては「楽しいはず」のイベントが、誰かにとってはストレスになることもあると認識する必要があるでしょう。特に、特定の年齢層や職種、性格の人だけが盛り上がる構造になっていないか、企画段階で慎重に検討することが求められます。
注意点②世代・属性の違いによるギャップを埋めること
社員の年代が幅広い場合、世代によって「楽しい」と感じるポイントが異なることにも注意しましょう。
例えば若手社員の中には、形式ばって上下関係の厳しい社内行事を嫌う人も少なくないのではないでしょうか。長時間の飲み会や上司の長話だけが続く行事は、退屈に感じられる傾向が高い一方、年配の社員は最近のゲームやオンライン企画に馴染めない場合もあります。こうした世代間ギャップを埋めるには、事前に社員の趣向や意見をアンケートし、全世代が楽しめる要素を盛り込んだ取り組みを意識するようにしましょう。
例えば、社内運動会では、若手が得意なeスポーツ競技と、年配社員が親しみやすい卓球やボウリングを組み合わせることで、それぞれの世代が楽しめられるようになります。またリモート参加者は、画面越しに応援コメントを送れるようにするなど、参加形態の選択肢を増やす工夫も効果的でしょう。世代の違いを対立要因ではなく、楽しみ方が人それぞれであることを理解することが重要です。
注意点③時間外の負担に配慮する
業務時間外に行うレクリエーションやイベントは、社員のプライベート時間を使っていることも留意しておきましょう。参加を強制しないのは当然ですが、実際には「自由参加」と言いながら出席しないと評価に響くのではと社員が感じるケースも少なくありません。
そうした暗黙の圧力を避けるため、経営者自ら「家族や自分の時間を優先してほしい」とメッセージを伝える、参加しなかった人にも後日内容を共有するなど、不参加の社員が不利益を被らない雰囲気をつくることが有効です。社員のプライベートを尊重しつつ、参加者には代休付与や残業代支給など正当な処遇を検討しましょう。
注意点④業務に支障が出ないようにする
イベント準備や参加に時間を取られすぎて通常業務に支障が出ることがないように計画しましょう。あくまで目的は、業務の円滑化や社内コミュニケーションの活性化であることを社員に伝えつつ、頻度や所要時間は業務状況に合わせて設定し、繁忙期の実施は避けるなどの調整はしましょう。
ユニークな社内コミュニケーションで従業員満足度を高めましょう
ここまで見てきたように、ユニークな社内コミュニケーション施策は、従来の枠組みにとらわれない発想で従業員の満足度や帰属意識を向上させることができます。ずる休み制度や社長サンドバッグといった一見奇抜な取り組みも、従業員の心理的安全性を高め、本音で話せる環境を作る目的に基づいて設計されているからです。
また導入後も、一部の人だけが楽しむ内輪ノリになっていないか、世代間ギャップに配慮できているか、業務とのバランスは適切かといった観点からも、継続的に施策内容を検証し、改善していくようにしましょう。、従業員一人ひとりが自分らしく働け、互いを尊重し合える組織づくりに向けて、自社に合ったユニークな社内コミュニケーション施策の導入を検討してみてはいかがでしょうか。